マクロビオティックの活動

 マクロビオティックは、何十年ものあいだ「人類の向上」という目的のために、生活習慣の全体的な見直しについての理解と普及に力を尽くしてきました。この間、マクロビオティックは、私たちの生活方法を改善するために、多くのアイディアを自ら実行し、人々に提案し、普及してきました。マクロビオティックが関与した分野には、植物性ベースの食事、伝統的な食文化、バランスのとれた栄養、ホールフード(一物全体食)、オーガニック食物、ナチュラルで再生可能かつ持続可能な農法、伝統的およびナチュラルな食品加工、健康に良い調理法、健康的な生活習慣、ナチュラルで生態系に優しい生活、家族のヘルスケア(健康管理)、代替医療、予防医療、生活習慣医療、ホリスティックおよび伝統的な治療、ウェルネス、東洋哲学とその実践、環境の改善と持続可能性、食糧自給率、周りの人々への思いやりや社会全体との連帯感、文化交流、ひとつのコミュニティとしての平和な世界の実現などがあります。私たち自身の健康管理の方法や、環境問題、社会問題などについて知りたい、積極的に参加してみたいといった関心が高まっていくにつれて、これらの分野での新たな考え方や実践が多くの人々を巻き込んでいます。マクロビオティックの見方を生活改善に役立ててもらうために、何年にもわたって使われてきた中心的な活動を次に挙げておきます。

より良い人生のための教育

 マクロビオティック活動の中核にあるのは、授業、執筆、出版、学校や教育センターの開設、セミナーやコンファレンスの企画などの教育活動です。マクロビオティックの見方や教育は、経験や実践、観察をとおしてこれまでも受け継がれてきており、これが私たちの基本的な姿勢です。

 

 マクロビオティック教育のおもな目的は、意識を高め、私たち自身の主体性を成長させ、私たちの生き方に現実的な改善を施し、より自立した、より健康的な、より幸せな人生を送ることです。学習のメインテーマは、生命、生活、人生(life)をより深く理解し、私たち自身をさらに知ることです。マクロビオティックは、バランス、健康、調和を実現するために、現代的な知識のほかにも、現代に通用する陰陽理論(生命エネルギーの現代的な理解)などの東洋的な見方を人々に紹介してきました。

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調理や食習慣の改善

 よく知られているマクロビオティックのモットーは、”We are what we eat(私たちは食物でできている)”という考え方であり、これは、選択の仕方、調理の仕方、食事の摂り方など含め、私たち食物から私たちは大きな影響を受けているということを意味しています。現代的な食物への嗜好と食習慣が、栄養やエネルギーのアンバランスを引き起こしており、これが健康の脆弱化(ぜいじゃくか)へとつながっていることに、マクロビオティックは早くから気づいていました。

 マクロビオティックはこのアンバランスな傾向を修正するために、自然に近い品質の植物性ホールフード(全体食:whole foods)を主体としたより伝統的な食べ方というアイディアを人々に紹介し、奨励し始めました。そして、確実な健康へとつながるバランスのとれた食べ方の基盤として、豆腐、海藻、種子、ナッツ、季節のフルーツなど健康に良い植物性食物の摂取量の増加にも力を入れ始めました。

 

 現在、この食べ方は理解されるようになっており、ますます広く知られるようになってきています。こんにち世界中で大勢の人々が経験している慢性病やよく知られている不調のほとんどは、生活習慣病として分類されており、食事のアンバランスが主要な危険因子であると考えられています。生活習慣病は、人々の生活の仕方に関連した疾患であると定義されています。この疾患には、心臓病・卒中・癌・慢性肺疾患・糖尿病などの慢性病と、肥満・高血圧・メタボリックシンドローム・骨粗鬆症・うつ病・アルツハイマー病・パーキンソン病などの病状が含まれます。

 

 これらは、非感染性疾患(NCD)と呼ばれています。そして、世界中では毎年4,000万人がこの疾患によって死亡しており、これはすべての死亡者数の70%以上になる数です。世界保健機関(WHO)では非感染性疾患(NCD)は、不健康な食事、身体的不活動、喫煙、アルコールの過剰摂取など実際の生活によく見られる原因を改善することによって予防できる疾患であると定義されています。その結果、栄養学会でも、栄養バランスを維持して慢性病やNCDを予防するには、ホールフード植物性ベースの食事が最も望ましい食事形態であるという見解に到達しています。

質の高い食物を奨励し、その入手をより容易にする

 食物の質に関してもマクロビオティックは重要な役割を演じており、さまざまな活動の中心に据えている分野です。マクロビオティックは、食物の質を改善し、食物をより持続可能な方法で生産し、環境を汚染したり、摂取や接触によって健康を害したりする化学物質の使用量を削減する方法として、ナチュラル(自然)な食材やオーガニックの食物の普及を率先して広めてきました。

 マクロビオティックによって広まったもうひとつの考え方は、食物を、精製したり高度に加工せず、未精製のままのホールな(全体としての)状態で食べるということであり、そういった過剰な加工を削減し、最小限にすることでした。過剰に加工を施すと、大事な栄養素だけでなく、エネルギーや生命力も食物から失われてしまいます。また、おもに地元産の食物をその季節に食べるという考え方も広めました。地球規模での食物市場から送られてくる食物は、遥か彼方から輸送されてくるので、異なった気候帯からのものもあり、食べる季節と合っていないことも多いのです。

 

 高品質の食物を手頃な値段で簡単に入手できるようにするために、マクロビオティックは、食物関連のさまざまな活動に積極的に関わってきました。おもなものとしては、オーガニック(有機)農法や自然農法などの持続可能な農法、ナチュラルで伝統的な食品加工、ナチュラルやオーガニックの食物を提供する会社やメールオーダーの設立、自然食品店・自然食レストラン・自然食カフェなどの開設などが挙げられます。

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調理というアートを創作する

 調理は、マクロビオティックと密接につながっている要素であり、極めて重要な役割を担っています。近年、食べる食物の割合やその品質が変わってきただけでなく、その調理法も変わってきています。現代の忙しいライフスタイルは、外食やテイクアウト、そしてコンビニエンス・ストアにあるような、すでに調理してあってすぐに食べられるものやパッケージされた食品などへの過剰な依存を作り出してしまいました。その結果、人々の多くは、上手に調理することができませんし、特に新鮮な食材を使った健康的な調理の仕方を知りません。しかしどれほど高品質の材料を使っていても、適切に調理ができていなければ、食材の持っている良さの多くは失われてしまいます。この分野の理解は、あまり進んでいないばかりか、栄養学では通常見落とされているため、多くの人々は、家庭での調理をとおして健康を改善しようとしています。

 マクロビオティックでは、伝統的な食文化に見られる健康によい面を尊重しており、それらを学び取って、私たちのプログラムにも組み入れています。日本や地中海地域は長寿で知られていますが、こうした伝統的に健康な社会を観察してみると、栄養バランスがとれているだけでなく、食文化の一部としてさまざまな要因が組み合わさっていることもその原因ではないかと思われます。そのなかには、地元の新鮮な食材の入手が可能なことや、旬の食材の多用、複雑でない加工工程、調理や準備段階への配慮、そして食事がどのように食べられ、どのようにシェアされるのかを考慮することなどが挙げられます。

 

 マクロビオティックは、芸術としての調理を新たに、そして独自に大きく成長させてきました。世界中のマクロビオティック講師、インストラクター、シェフたちは、ナチュラルで健康によい食材をバランスよく健康的に調理する方法を教えるという、重要な役割を担ってきました。クッキングクラスやデモンストレーションのほかにも、長年にわたって、マクロビオティックの料理本が多数出版されていましたし、今やインターネットによって、健康によい料理に関するさまざまなアイディアも数多くシェアされています。もちろんこれは現在進行しているプロセスの一部ですが、さらに多くの人々が自分の健康管理に興味を持つようになり、人類全体が、高度に加工された食品への依存を減らして植物性ベースの食事に変わっていけば、これらの活動もさらに重要なものとなっていくでしょう。

健康的なライフスタイルの実践を紹介し、広めていく

 健康は、私たちに生まれつき備わっているものです。その事実に気づくためにマクロビオティックでは、バランスをとることで生活全体を見るようにしていますし、実際の事柄にも注意を払っています。私たちの幸せにとって不可欠な事柄ですが、私たちのライフスタイルのなかのさまざまな事柄も重要なものとなってきます。

 より良い生活を送るための実用的なアイディアの例としては、増えつつある人工的なライフスタイルや座りがちなライフスタイル、電磁波などから受ける悪影響を抑制するために、野外での活動を増やして、より身体的に動くことが挙げられます。私たち人類は、自然環境とのより良い調和を学び取って、自然と共存しながら繁栄してきましたので、マクロビオティックでは、より自然な生活を送ることを奨励してきました。また、私たちの家庭や仕事場で摂っている化学物質を減らす必要も出てきています。こうした化学物質の摂取は近年、さまざまな健康問題と関連視されています。また、汚染などの環境問題に取り組むためにも、生態系に目を向けることが必要となってきます。

 また、身体と心を成長させるためのさまざまなエクササイズやテクニックも、頻繁に紹介し、教え、広めてきました。それらには、導引、セルフマッサージ、経絡ストレッチ、呼吸法、瞑想、座禅、ビジュアライゼーション、チャンティング、ヨガ、柔道、合気道、太極拳などさまざまなものがあります。これらの多くは、今やとてもポピュラーになっていて、世界中の人々によって日々実践されています。またこの内のいくつかは、健康やストレス・マネージメント、そして多くの慢性症状の予防や回復のためにも推奨されています。

ナチュラル、伝統的、そしてホリスティックな治療の勧め

 こんにちの私たちが1週間のあいだにしている健康の管理法を見てみますと、対症(症状の除去に焦点を合わせた)療法への依存度がかなり大きいことがわかります。こうした依存は、自分の健康を自分で管理し予防する重要性から目をそらさせてしまいました。この問題に対してマクロビオティックは、まず自分の健康は自分で見ることを奨励しています。そして自分の健康を管理する方法を、教育や練習、指導などをとおして提供しています。現代では、周りの人々を手助けする人ほど、より健康的な食生活やライフスタイルを選択するという傾向にあります。完全に健康な社会を創るのは、私たち個人個人の自主的な参加と努力にかかっていることがますますはっきりとしてきています。

 疾患の予防や健康の自己管理に十分な注目が集まっていないので、世代が変わるたびに私たちは脆弱化(ぜいじゃくか)し、さまざまな不調や疾患にかかりやすくなるという問題に直面しています。そしてこの状況を切り抜けるために私たち人類は、より強力な薬品や強烈な副作用が起こるような治療法も使うようになるため、さらなる問題へとつながっていく可能性も出てきています。そして今や、医原性(医療ミスなど)の合併症や損傷、疾患や死亡などの増加へとつながっているのです。

 

 医原病は、医師の行為、投薬、理学療法などの治療によって起こる損傷または疾患と定義されています。米国では、薬による有害反応などといった医療ミスによる死亡者数は、医療関連の死亡者数のなかで第3位を占めています。一方、健康保険への拠出額は上がり続けているため、多くの人はもはや払えないという状態であり、経済的な重荷となっているため、終わりが見えない状況となっています。

 

 健康への懸念のために世界中の多くの人々は、何十年も前にマクロビオティックを始めました。マクロビオティックによって多くの人々が良好感を感じ始め、健康を回復する人が徐々に出てくると、マクロビオティックは、自然な方法で疾患を予防し、また取り除くことができるホリスティックな方法であるとして知られるようになりました。自然な手段で健康を取り戻すというマクロビオティックのアプローチには、通常、調理の仕方や食べ方に特別な調整を加えることや、各自が自己管理の一部としてできる健康的な生活スタイルをさまざまに取り入れることが必要となってきます。これは、今や多くの関心が寄せられているセルフケア(自己管理)によるアプローチのひとつであり、多くの人々が積極的に自分の健康管理をしようとしています。

 多くのマクロビオティック講師や実践している人は、伝統的なさまざまな治療法やホリスティックな治療法を取り入れたり、教えたりしてきました。特に、身体への負担が少なく、健康を取り戻すたすけとなるうえに、副作用や合併症の心配が軽減できたり最小限に抑えられるような治療法が選ばれました。マクロビオティックに関連していたり、マクロビオティックで使われることもあるホリスティックな治療法には、次のようなものがあります。刺激を与えてエネルギーの流れを整えてくれる指圧や整体などのマッサージやボディワーク、鍼灸などの中国医学、カイロプラクティック、霊気、ナチュラルで伝統的な薬草、アーユルベーダ、ナチュロパシー、アロマセラピーなどです。今やこれらの多くは、世界中で広く実践されており、医療センター、病院、クリニック、老人介護施設、ヘルススパ、健康施設などでも提供されています。

環境意識や社会への関心を高め、現実的な解決策を見つける

 マクロビオティックは、さまざまな教育活動をとおして、環境や社会への関心を高める努力をしてきました。また、マクロビオティックの生活方法の一部となっている多くの実践や推奨には、個人的な目的や自分の家族の心配だけでなく、社会全体の改善や地球の保全も含まれています。例えばマクロビオティックの食事は、バランスのとれた健康によい食事パターンだというだけでなく、この時代の環境や社会に対するさまざまな懸念に取り組むという目的も含まれています。

 現代の世界規模での食糧供給システムや食生活は、環境的に持続不可能であり、無駄が多すぎます。集約農業や家畜産業は、温室効果ガスの主要排出元であり、地球温暖化や気候変動に大きく寄与しています。こんにち、世界中で生産されている食糧の1/3は、食べられずに捨てられているか、無駄になっています。そしてそれらの食物だけでなく、その無駄になった分を生産するために使われた資源も捨てられてしまうため、不必要な汚染や温室効果ガスの放出にも寄与しているのです。

 

 その一方、生産された穀物の大半や大豆のほとんど、そして海で捕獲された魚の多くは、家畜の飼料として使われ、莫大な量の動物性製品となっていきます。こうした状況では、人間が直接食べる食糧はますます少なくなっていくうえに、食糧の無駄や廃棄も加わることによって、いまだに世界中の多くの人に、飢餓や栄養失調を強いているのです。食糧不足に環境の劣化や気候変動が加わることで、近い将来、さらに多くの移民や難民が出てしまうおそれがあり、そうした場合、さまざまな社会的影響やさらなる困窮の出現も懸念されます。

 

 マクロビオティックは長年、よりナチュラルで持続可能な生産方法や加工方法、さまざまな気候や環境に適応する植物性ベースの食事形態、そして地元産の旬の食材を食事の中心に置くことで自給率を高めていくことを推奨してきました。これらが実施されれば、温室効果ガスの放出量は劇的に下がり、土壌は改善され、環境汚染は減り、自然環境への重圧は和らぎ、食糧の廃棄や無駄は減少し、家畜産業からの新型のウイルスや細菌による疾病への危険性は軽減されますので、より健康的、より公平、そしてより責任の取れる方法で人類を養うための一助になると考えています。

 これまでマクロビオティックは、主として、健康的でよりよい生活を送りたいという人たちの関心を集めてきました。しかし、こうしたさまざまなアイディアが社会で広く実践されるようになれば、疑う余地のない明白な結果が社会にも現れてきて、地球全体の「健康」の回復にも有用であるとなっていくはずです。自分の生き方に前向きな変更を加えることは、いつでも、誰にでもできることですので、環境や社会への関心に目を向けてもらうには、これが一番効果的な方法であると考えています。またこれは、ほとんど初期投資なしでできることですし、見方によっては、長期にわたれば貯金も可能となるはずです。それは、環境の改善費用、気候変動による費用、健康保健費用、機能不全の食糧供給システムに配給されている農業助成金などのすべてが、いまだに増え続けているからです。これらすべてを考慮すると、よりよい世界を創り、人類に明るい未来を約束するためには、マクロビオティックの生き方が最も賢明な方法であると考えられるのです。