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マクロビオティック食事法

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イントロダクション

 産業革命の出現や、科学・工業・技術の進歩によって、私たちの生活は重大な変化を経験することになりました。なかでも、世代を超えて広範囲に変化を経験したのは、私たちの食物と食習慣でした。そしてこんにちの大多数の人々にとって日々口に入れるものは、質の面からも組み合わせの面からも、それほど前ではない時代の先祖が食べていたものとは、似ても似つかないものとなってしまいました。

 世界の食物や食事がたった1日で変わるはずもなく、その変化は、世界各地において多少異なった経緯をたどりましたが、共通する点もありました。人々や社会が、その土地固有で自然な品質の伝統的な食べ方から離れて、地球規模の食糧市場からの動物性食物・加糖食品や加糖飲料・高度に加工され化学物質の入った食品の大量摂取に代表される現代的な食文化を受け入れると、彼らの健康は悪化していったのです。そしてこんにち、私たちは、おもに栄養やライフスタイル(生活習慣)に関連した慢性病や、よく知られているさまざまな不調や疾患の世界的な蔓延を目の当たりにしているのです。

 

 マクロビオティックの教育者たちは以前から、現代的な食物や食事の変化が、私たちの健康に悪影響を及ぼすということに気づいていました。彼らはその事実を人々とシェアするために、自身の経験や理解から、基本的な食のガイドライン(指針)やシンプルな食事推奨を創り始めました。そしてそれらを人々に教え始め、さまざまな出版物や講義などの活動をとおして広め始めました。それは、食物の品質をナチュラルに戻し、人々や社会が、より健康的で完全な食べ方を実践できるようにお手伝いをするためでした。

 

 マクロビオティックの食事は、厳密なルールをベースとしておりませんし、従わなくてはならない厳格な規則もありません。また、複雑な栄養学の理論や捉えようのないエネルギー観もありませんし、実行不可能な込み入った食事の指針もありません。それはむしろ、人々がバランスのとれた「いつもの食べ方を」維持することができ、健康と幸福感を最大限にするための食物選択ができるようにするための実用的なアイディアを人々とシェアすることなのです。また、より健康的で、環境的により持続可能で、社会的により誠実な方法で人類は養えるという方向性を世界に示し、伝えていくことなのです。

 

 マクロビオティックの食事法は、世界中のどこでも同じように見えますが、講師はそれぞれ違う人ですし、マクロビオティックを提唱した人やスクールの方針の違いがあるため、基本的な指針や推奨する食物が多少異なることがあります。これはおもに、マクロビオティックの解釈、その人の背景、立地場所、その地域の食文化、実践の仕方、講師などの要因が異なっているために起こります。同じように人々についても、その人の選択方法やその人特有の状況、目的、必要性、嗜好などによってさまざまな実践方法が考えられます。

 

 実際のところこれはとても重要な点であり、これが、マクロビオティックの食へのアプローチを形作っている要点でもあるのです。おもにそれは、私たちの食べ方が「誰にでも合うユニサイズ」のような方法で実践することができないからです。食べることは、私たち誰もが毎日することですが、慎重に、しかし柔軟性を持って、各自がそれぞれに管理をしていく必要があります。また食物は、文化とも関連していますので、自分の住んでいる地域に十分適合しているべきでしょう。食物や食べることは、生活の本質的な部分ですので、楽しむべきものであり、満足感を与えてくれるべきものなのです。

 食物を生産し、加工し、調理することや、伝統的な食べ方からも離れてしまった現代人の多くは、どう食べたら良いのかがわからずに困惑しています。食物ではなく栄養素にだけ焦点を当てることもそのたすけにはならず、伝統的な食事形態をベースとした分別のある食べ方からは、さらに遠のいてしまうこともありました。地球規模での食物の産業化も、私たちの滋養の改善には何のたすけにもなりませんでした(滋養には栄養素だけでなくエネルギーなども含まれてます)。むしろ、より便利な食物をさらに安くという私たちの飽くなき追求は、食物のように見えるだけの高度に加工された製品をこれでもかと言うほど造り出してきました。そしてその中身は、元の自然な食物からは、栄養的にもエネルギー的にもまったく異なったものとなっていました。また、私たちが地元の土、地元の食物、地元の人々との密接な関係を断ち切ってしまったために、私たちの健康への負担や環境への損害が起こってしまったのです。

 マクロビオティックでは、食物や食べることに対して誠実で現実的なアプローチをしたいと考えています。もちろん私たちは、どう食べるかについての生まれつき持っている感覚を取り戻して、この現代社会に自然で健康的な食の革命を起こすには、時間と努力が必要であることはわかっています。しかし私たちは、そのプロセスをすでに始めています。簡単な食のガイドラインと食物選択の基本的な推奨を提供することは、とても役に立つうえに、必要ともされています。特にマクロビオティックを始めた頃は、バランス感覚を身に付けて、正しい方向へと向かわせることにも役立ちます。

 しかし、食べ方を変えて食習慣の改善を実行することは、さらに重要です。そのためマクロビオティックの教育活動は、知識を広めることだけに専念するわけにはいきません。貴重な経験をシェアし、あなたをサポートし、そして導いていくことで、食物の選び方、調理の仕方、そして楽しく健康的な食べ方が、一歩ずつ上達していくのです。

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マクロビオティック食事法の基本

 マクロビオティックでバランスのとれた食べ方を始めるときには、食物カテゴリーごとの基本的なプロポーション(割合)を維持することが、必要となってきます。これには、食物カテゴリーの種類のほか、おおよその割合や1日に食べる量を知っておく必要があります。

 世界各地の温帯地域または熱帯地域に住んでいる人のためのマクロビオティック食事法は、おもに植物性の食材を使ったものでできていますので、動物性の食物は各自の選択に任せるか、補助的に摂るようにします。また、希望する人は控えめに摂るようにしています。大きめのサイズの動物性食物が適切な場合も出てくることがありますが、こうした推奨はさまざまな考察がなされた結果出されるものです。これについては後ほどご説明します。

 

 こうした観点から、マクロビオティックは食材のバラエティが豊富で、バランスがとれている、よく考えられた植物性ベースの食事だと見られているのでしょう。植物性ベースの食事は、一般的に食材のすべて、あるいはそのほとんどを、穀物、野菜、豆類、海藻、種子、ナッツ、フルーツなどの植物から得ている食事形態であると定義されています。植物性ベース食は、必ずしもベジタリアン(肉は食べないがほかの動物性食物を摂ることもある)やビーガン(動物性の食物や製品を一切摂らない)である必要はありません。

 

 しかし現在の、植物性ベース食の概念は幅が広く、そのうえ多くの場合、食材の割合ははっきりと決められていません。そのためマクロビオティックの推奨が、ほかの植物性ベースの食事によるアプローチと異なることもあります。また、自分に必要な養分のほとんどを穀物や野菜、豆などから摂る場合と、フルーツやナッツ、種子などから摂る場合でも、その両方が植物性ベースの食事だと考えられていることは覚えておいてください。

 

 マクロビオティックは、持続可能性や自給率の向上、そして地元産の在来作物の重要性にも重点を置いています。また、旬の食材を多用することや、その地方独特の気候や地形に合わせた調理法や食べ方を調節することで、自然と調和した生活や伝統的な食文化を尊重することにも重点を置いています。そのため、マクロビオティックが現代に合った伝統的な食事形態だと見られるのでしょう。

 マクロビオティックでは伝統を、何か制限のあるものとか、厳格に守らなくてはならないものだとは見ていません。その反対に伝統的な食文化は、私たちがこれからも積み重ねていける確かな基盤を提供してくれます。マクロビオティックの目指している目標には、伝統的な食物や調理の仕方、食文化を形作っているそのほかの活動を復活させるだけにとどまらず、それらを進化させ、さらなる発展を続けていくことも含まれているのです。そして、人生を楽しむための健康を最大限に高め、人生の多様性や可能性も増やしてくれるのは、バランスのとれた滋養を補給することです。これには、食物による交流や調理面でのシェアに積極的に参加することも含まれています。

 

 マクロビオティックの食事法に不可欠で、私たちが特に注意を払っているもうひとつの特徴は、食物の品質の重要性です。私たちは、できる限り新鮮でナチュラルな品質の食物を使うように奨励しています。これには、ホールフード(whole foods)もしくは未精製のものや最低限に加工されたものも含まれます。また、オーガニックの食物、もしくは化学物質・化学肥料・殺虫剤・人工添加物・ホルモン・抗生物質などの薬品・遺伝子組換えの種子や製品などを使わずに生産・加工されたものも含まれます。質の点からもマクロビオティックは、バランスのとれたホールフードの植物性ベース食だと見られているようです。

 

 次に挙げるのは、より健康的でバランスのとれた食べ方を試してみようとしている人や始めようとしている人のために、マクロビオティックの食事法で使われている基本的な食物カテゴリーと、マクロビオティック・スクール・ジャパンでの実践から得られたヒントを紹介したものです。

全粒穀物

 マクロビオティックの食べ方において全粒穀物は必需品であり、ほとんどの食事は、何かしらの全粒穀物か全粒穀物製品が中心となっています。よく使われている全粒穀物には、さまざまな種類の米、アワ、キビ、ヒエ、小麦、大麦、オーツ麦、ライ麦、トウモロコシ、蕎麦の実、ハト麦、キノア、アマランサス、ワイルドライスなどがあります。全粒穀物製品や全粒粉製品もこのカテゴリーに入っており、パン、麺、パスタ、ロールドオーツや押麦などの加工品、コーンポレンタ、クスクス、ブルガー、ポンセン、パンケーキ、マフィンなどなどがあります。

 穀物や穀物製品を精製されていない全粒(ホール:whole)の状態で食べることは、マクロビオティックの食事推奨の根幹です。そして、全粒のままで食べることや美味しく調理するコツをシェアすること、そして日々の食事に取り入れることなどによって得られる健康への利点を人々に教えていくために、長年のあいだ多くの努力が払われてきました。科学界におけるこんにちの定説では、すべての穀物や穀物製品は、全粒の状態で食べたほうが良いとされており、また世界の主要な健康団体は、全粒穀物の摂取量を増やすよう推奨しています。

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野菜

 マクロビオティックの食べ方のなかでも野菜は不可欠なものであり、毎日大量に食べられているものです。私たちはできる限り、地元で採れた旬の新鮮な野菜を使っています。また、自然な状態で乾燥され、加工されたものを使っています。バラエティはとても重要で、日々さまざまな種類の野菜を使うだけでなく、調理の仕方も頻繁に変えています。発酵野菜である漬物は酵素や有益菌(probiotics)の宝庫であり、食物の消化吸収を助け、腸内細菌叢(そう:集団)の状態やバランスを保ってくれますので、日常的に使っています。

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豆類

 豆類もまた、マクロビオティックの食生活で日常的に使われる食材ですが、通常は、穀物や野菜に比べて少なめにサーブされます。豆類は、人類の食事のなかで重要な役割を担ってきており、多くの伝統的な文化では、それぞれの地元料理のなかでいまだに中心的な位置を占めています。しかし世界の多くの地域では、その中心的な位置が動物性の食物に取って代わられており、豆の消費量は年々減少しています。しかし、多くの人々が植物性ベースの食事へとシフトしつつある今、豆を使った料理も徐々にですが復活しつつあります。豆を使った料理の可能性は素晴らしく、マクロビオティックでは多くの伝統的な調理法も教えていますが、オリジナルな調理法や斬新なものも数多く紹介しています。

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大豆製品

 大豆製品は、豆類のカテゴリーに入ります。伝統的な大豆製品は、東アジア全域で日常的に食べられてきており、各地域の食文化のなかでは不可欠なものとなっています。西洋や世界各地に多くの伝統的な大豆製品を紹介し、広めるのにも、マクロビオティックが重要な役割を演じました。一口に大豆製品と言っても幅は広く、豆乳、豆腐、高野豆腐、テンペ、納豆、湯葉、油揚げ、厚揚げ、がんもどき、おからなどその種類は多岐にわたり、マクロビオティックの食卓でも喜ばれています。大豆製品は調理しやすく、便利なうえに、キッチンでも多方面に使えますので、世界中からの支持を集めたのでしょう。大豆製品は、健康によい植物性の蛋白質、カルシウム、鉄分の供給源として広く認められており、動物性食物の代替品としてしばしば推奨されています。

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海藻と淡水藻

 海藻や淡水藻は、マクロビオティックの食べ方に組み込まれており、通常は比較的少量を日常的に摂ります。海藻や淡水藻は、太古の昔から食べられてきており、特に河川や湖沼、海などの水辺に暮らしていた伝統的な社会では食事の一部となってきました。しかしほかの食物同様その使用量は、時が経つにつれて徐々に減少していき、世界中のほとんどの人々は、現代食が普及するにしたがって食べるのをやめてしまいました。マクロビオティックは、さまざまな種類の海藻を使った料理を積極的に紹介し、普及し、教えてきました。今や世界では多くの人々が、海藻に慣れ親しむようになってきており、現代の健康志向の家庭では徐々に知られた食材となってきています。

 

 海藻や淡水藻は、あらゆる食物のなかで最も栄養素が凝縮されている食物です。ほかの食物と比較すると、血液を強くし確かな健康を得るための必須ミネラルなどのほか、微量栄養素が最も幅広く含まれています。また、主として動物性食物に含まれると考えられているビタミンB12を初めとする、多くのビタミンの供給源でもあります。この点は、特に現代と関連しており、現代食に見られるようなミネラル欠乏症など、鉄分やヨウ素などの微量栄養素の不足がその一例として挙げられます。微量栄養素の不足の原因と考えられるものには、十分なバラエティや全体的なバランスに欠けた食事のほかに、こんにちの一般的な食物のほとんどに見られるようなミネラル含有量の低下を招いているミネラル不足の貧弱な土壌や、ほとんどの食品からミネラルやビタミンを失わせている精製工程、そして重要な微量栄養素が欠如した加工食品への過剰な依存などが挙げられます。

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種子とナッツ

 種子とナッツも、世界各地の人々によって食べられている最も一般的な食物のひとつですが、私たちの食事を豊かにもしてくれます。マクロビオティックの食べ方では、これらの食材を少量、穀物や野菜の料理に掛けたり、小麦粉の料理や詰め物に加えたりするほか、ソース、ドレッシング、コンディメント、スウィーツなどをつくるときに使っています。また、スナックとして食べたり、飲み物をつくることもあります。種子とナッツには、花や野菜、灌木や高木となるためのすべての要素が含まれています。このため種子とナッツには、多くの必須栄養素がすでに備わっていますので、ほかの植物性ベースの食物をうまく補うことができるうえに、栄養バランスがとれるのです。種子とナッツを選ぶ際には、その原産が、自分の住んでいる場所に近いか、同じ気候帯のほうが良いでしょう。

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フルーツ

 フルーツは野生のままでも大量に生るので、太古の昔から人類の食事の一部を担ってきました。農業の発達に伴っていくつかの種類が栽培されるようになり、多くの例が示すように、一部の地域に特有の種類が世界中に広まりました。野菜やほかの新鮮な作物同様、その地域で採れた旬の時期のフルーツは、最も美味しく、栄養があるのでお勧めです。フルーツは、一年中使えるように干したり、フルーツ・プリザーブ、フルーツ・スプレッド、フルーツのシロップ漬けなどにして楽しむこともできます。そして時には、搾ってジュースにしたり、シェイクやスムージーに加えたりして飲み物をつくるのもよいでしょう。これも自分の住む気候帯原産のものを推奨しています。

 マクロビオティックの食べ方では一般的に、フルーツを補助的な食物と見ているため、摂取の頻度や量は、気候帯、旬の時期、各自の嗜好などの要因によって変わります。一般的にフルーツは、一年中豊富に採れる熱帯地方ではかなりの量が食べられていますが、温帯地域では控えめな量が、そして寒い地域ではさらに少ない量が食べられています。そして、フルーツに含まれている主要な炭水化物であるフルクトースは単純糖質ですので、全粒穀物や野菜、豆などに含まれている複合炭水化物よりも急速に血中に取り込まれることを覚えておいてください。そのためフルーツは、通常少なめの量を摂るようにし、デザートとして食事のときに摂るのではなく、スナックや特別のご褒美として摂ったり、スウィーツの材料として使います。

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ナチュラル・スウィーツ

 マクロビオティックは、もちろん厳格な食事ではありませんので、私たちも、さまざまな食物や調理スタイルを広く楽しんでいます。過剰な量にならなければナチュラル・スウィーツも、バランスのとれた食べ方の一部に入ります。健康的なスウィーツをつくる鍵は、材料の品質と甘味料の種類にあります。通常、マクロビオティック・スタイルのナチュラル・スウィーツには、卵、クリーム、バターなどの動物性製品が入らない分、全粒穀物、全粒穀物製品、野菜、フルーツ、豆、種子、ナッツ、スパイス、ハーブ、植物性油、植物性ミルクなど健康によい植物性の食材を使います。

 現代の食事によく見られるような添加された糖類やスウィーツ、甘味飲料などに関する問題は、一般的に過剰摂取が原因で起こっています。また、これらに使われている甘味料や原材料のほとんどが、高度に加工されているか、精製されているか、もしくは人工的に造られているなどの低品質であることもその一因となっています。未精製の甘味料は、自然な原材料から得られたすべての貴重な栄養素が含まれているうえに、やさしい甘味ですので、精製された甘味料よりも身体に良いとマクロビオティックでは考えています。

 

 私たちは、化学物質を使わずに自然な方法で加工したものや、伝統的に加工したもの、例えば米飴、麦芽糖、甘酒(甘味料として)、ピュアなメープルシロップ、自然なフルーツシロップ、未精製の甜菜糖やシロップなどを特にお勧めしています。これらもほかの食物カテゴリー同様、自分の住んでいる気候帯原産のものが良いでしょう。そのため熱帯に住んでいる場合には、上記した甘味料以外のものも使えます。これらの甘味料のほか、フルーツやドライフルーツ、フルーツジュースなど自然な甘さのある食物も、スウィーツをつくる際には素晴らしい可能性を引き出してくれます。

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動物性食物

 マクロビオティックでは、動物性食物の摂取に柔軟性を持たせています。私たちは、いずれは各自の責任で、食べるか食べないかを判断するようになりますので、最初は十分な情報や知識を得て、自分たちを教育するための時間が大切になってきます。マクロビオティックでは、生徒たちが心地よい食べ方が気軽にできるよう基本的な指導を行ったり、アイディアをシェアしています。これにより、健康や幸せ感が高まるうえに、各自の好みも尊重できますし、特別な機会への配慮もできます。

 現在は一般的に知られていますが、私たちが発見した事実のひとつに、現代人のような動物性食物の食べ方では、彼らの健康や地球の健康に対して悪影響を与えるというものがあります。肉や加工肉、鶏肉、ミルク、乳製品、卵、甲殻類などの過剰摂取は、ここ数年間の現代社会での慢性病や生活習慣病の蔓延と明らかに関連しています。そしてこんにちの科学的根拠を基盤とした考え方では、『ホールフード植物性ベースの食事』が最も健康的で、最も環境に優しい食事形態であるとされています。そして、今や世界中のほとんどの政府や主要な健康団体は、健康的な食習慣を奨励し、慢性病や生活習慣病を長期にわたって予防するたすけとするために、動物性食物の摂取量を下げる食事指針を打ち出しています。

 

  動物性食物を希望する人が控えめに摂ること以外にも、健康状態をさらに高め、環境への影響を抑えるためには、どういったタイプの動物性食物を摂るのかについても考慮する必要があります。マクロビオティックでよく選ばれるチョイスとしては、魚介類が頻繁に挙げられます。そのなかでも特に脂質の少ない淡白な白身魚が挙げられています。しかし動物性食物は、毎日必要なものではないので、平均で週に数回程度ほどが適切だと考えています。

 

 そのほかのタイプの動物性食物は、各自の選択に任せるところがさらに大きくなり、通常はその頻度がさらに少なく、平均で月に2、3回程度となります。そのほかの動物性食物のなかでは、ナチュラルチーズやヨーグルトなど少量の乳製品や卵のほうが、肉類よりは影響が少ないでしょう。そして、鶏肉、鳥肉、野鳥などの小動物のほうが、哺乳類の赤肉よりもまだ良いでしょう。現在の科学的な知見を考慮すると、ソーセージ、ハム、ベーコン、ホットドッグなどの加工肉は、ほかのすべての動物性食物に比べて最も不健康であり、その摂取に際しては真剣に再考してみる必要があるようです。

 もちろん、こんにちのほとんどの人々は、動物性食物を大量に食べることに慣れていますので、その摂取量を減らしていくには時間をかけてゆっくりとやっていく必要があるでしょう。ここで注意してほしいのは、これらの推奨はあくまで目安であり、そのほかの点を考慮して調整する必要があるということです。例えば、砂漠や乾燥地帯、標高の高い地域、とても寒い地域などに住んでいる人々は、作物の栽培期間が短く、植物性食物の入手にも制限があるので、多めの量の動物性食物が必要となるうえに、伝統的にも食べられてきています。

 摂取を希望する人が考慮すべき点は、摂取する動物性食物のタイプや摂取量に注意を払うほかにもあります。それは、よりバランスのとれた動物性食物の調理法と、サーブの仕方を学ぶことです。これは、動物性食物のより健康的な摂取方法であり、マクロビオティック的なアプローチのひとつと言えるでしょう。こんにちの調理のほとんどは、便利と感覚的な満足感に焦点を当てており、消化しやすくするためのアイディアや、食事全体の栄養バランスやエネルギーバランスなどの重要な要素は含まれていません。そして動物性食物に関しては、これらの要素が、健康への影響に対して重要な役割を担うことになってくるのです。

 

 また、動物性食物を希望する人は、こんにち入手できる動物性食物の品質が、数世代前のものと大きく異なっているという事実にも目を向け、心に留めておくべきでしょう。こんにちの肉や乳製品、卵などのほとんどは、大量の家畜が、身動きできないような不適切な環境で飼育され、低品質の飼料を与えられ、成長を早めるためのホルモンを投与されている、工場のような農場で生産されています。こうした状態は、家畜たちの健康に悪影響を与えますので、さらに過剰な量の薬品や抗生物質が与えられています。海洋では、魚介類の乱獲と魚の数の減少のために、こんにち食べられている魚介類の約半分が、養殖場からのものです。そして魚介類の養殖場の状態は、工場型農場の飼育状況とさほど違ってはいません。

 広範囲で進んでいる汚染もまた、動物性食物の品質を劣化させる要因となっており、残留農薬、水銀、PCB、ダイオキシンなど多くの汚染物質がかなりの量で含まれていることがあります。これらすべての要素が、これらの動物性食物の摂取が果たして人間にとって安全なのかという問いを投げかけているのです。動物性製品の品質と家畜の飼育方法についての健康的および倫理的な懸念が高まってくるにつれて、世界各地でますます多くの人々が、動物性食物の選び方について慎重になってきています。

 動物性食物を私たちの食事に入れるか否かに対する答えは、今や、栄養、健康、品質だけを考慮して出すわけにはいかず、伝統や食文化を考慮に入れても出すことはできません。こんにち消費されている莫大な量の動物性食物は、膨大な数の家畜の飼育を伴い、現在地球上の全農地のおよそ80%は、動物性食物の生産に使われています。一方、世界の総漁獲量の1/3は、その家畜の飼料に使われています。そして近年、家畜産業は、延々と続く環境問題や社会問題のリストに挙げられている問題のすべてと直接関係しており、そのリストには、環境の劣化、生物多様性の消失、動植物の絶滅、森林破壊、温室効果ガスの放出、天然資源の非効率な使用、持続可能性の欠如、食物の損失や無駄、経済の不均衡、社会的不平等、飢餓、民族の移動や難民の増加、武力紛争などなど、人類が直面している多くの問題が列挙されています。

 私たちの食物選択が私たちの健康や地球、環境に与える影響についての関心が増え続けるなか、世界中で動物性食物の摂取を大幅に削減しようという動きが出てきています。そしてビーガン食を取り入れる人や動物性食物全般を控える人も多くなっています。さらに多くの人々は、動物愛護の観点からの純粋な懸念からや、仲間である人類全体に対する思いやりから、そして地球の健康に関する懸念、あるいは将来に対する希望などからこれらの決断をしているのです。これらの決断は、私たち人類の幸せと未来の世代の幸せに影響を及ぼしますので、私たち人類が全員で認識し、正しく理解するべきことなのです。

 マクロビオティックは、個人の選択を受け入れつつ、食べ方の多様性も後押ししています。また、ビーガン食を実践したい人もサポートしています。実際、長年のあいだマクロビオティックを実践している人々の多くは、現在のビーガン運動が広がる前から動物性食物を一切摂っていません。ビーガン食を始めたい人には、バランスのとれた食べ方についての知識が得られる一方、植物性食物からはすべての必要な栄養が得られますので、マクロビオティックから得られるものは大きいはずです。また、さまざまな種類の健康に良い植物性食物を使った、十分に満足でき、美味しく調理する方法をも数多く学ぶことができます。

ナチュラルな調味料と植物性油

 食物を美味しく楽しめるように味付けするためには、調味料が必須です。マクロビオティックの調理法では、味のバラエティを創り出したり、美味しい食事をつくるために、伝統的でナチュラルな調味料をいくつも使っています。これには未精製の海塩や、控えめな量のハーブやスパイスも含まれます。醤油、溜り醤油、味噌、酢などの伝統的に自然発酵させた調味料も日常的に使っており、料理のバラエティや味付けの幅を広げるためにもお勧めしています。

 伝統的に発酵させた調味料には、自然に発生する酵素や有益菌が含まれており、内臓の健康を維持するのに効果があります。また、食物の消化を助け、栄養の吸収を高めるという利点もあります。しかし食材の持っている自然な風味を損なわないためには、使用する調味料の量を慎重にする必要があります。これは、すべてを味気なくしろと言っているわけではありません。ダイナミックな味付けによる、美味しくて満足できる食事はとても大切です。

 使う油を良質なものにし、その量を少量にすることも、バランスのとれた食べ方のひとつです。比較的低温で、種子や穀物、フルーツやナッツを圧搾し、最小限に濾過した高品質の油がお勧めです。見た目には濁りのあるもので、原材料の香りや風味があるものが良いでしょう。圧搾された未精製の油に含まれている、ビタミン類、ミネラル、脂肪酸などの重要な栄養素は消化のたすけとなり、ビタミンEなどの抗酸化物質は、添加物を使わなくても酸化しにくくしてくれます。

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飲み物

 通常は、フィルターを通して不純物を取り除いた水道水をお勧めしていますが、近くの泉や井戸からの自然な水もお勧めです。そのほかには、カフェインの少ない番茶や茎茶、焙煎した穀物茶、焙煎した豆のお茶などがよく用いられています。また、茶、カモミール、たんぽぽ、ハイビスカスなどの花、葉、茎、根などから造られる芳香性のものや、若干刺激性のあるものも飲まれていますが、摂取する頻度は一般的に少なめです。コーヒーや紅茶などカフェインの強いものや刺激性のあるものは、各自の選択に任されています。手作りで搾ったジュースやスムージー、甘酒、植物性のミルク、穀物コーヒー、自然な醸造法で造った強くないアルコール飲料、発泡性のミネラルウォーターなど、さまざまなナチュラルな飲み物も、控えめであれば欲する人によいでしょう。いずれにせよ、できる限りオーガニックのものや自然な加工がされた飲み物をお勧めします。

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